東京CDE・CDS Excellent Awards 2023受賞者を決定いたしました

厳正なる選考の結果、以下の通り最優秀賞及び優秀賞の受賞者を決定いたしましたのでお知らせいたします。
東京CDE・CDS Excellent Awards 2023にご応募いただいた皆様、どうもありがとうございました!

東京CDE・CDS Excellent Awards  

最優秀賞 藤重 如思 様

東京CDEとして日々進化している糖尿病の医療を学ぶ機会を得られることは薬剤師としてとても心強く感じる

 「数日下痢が続き食事も全くできていない。仕事がどうしても休めない。明日1日乗り越えられる栄養ドリンクがほしい」と青白い顔をした男性が薬局に入ってきた。どうやら糖尿病のお薬を飲んでいる。低血糖は大丈夫だろうか?心配だったため、製薬会社から提供してもらったブドウ糖10gスティック2本を栄養ドリンクに添えてお渡しして指導した。後日、その男性が処方せんを持参して来局。「はじめて低血糖になった。あんなに怖かったことはなかった。ブドウ糖をもらって本当に助かったよ。ありがとう」それから2か月は来てくださったが継続はしなかった。その後、他の科で受診された時に来局。「ごめんね。忙しくて下の薬局でお薬をもらっちゃうんだ」同年代である彼の仕事が忙しいことは十分に理解できる。
 その時期に出会ったのが東京糖尿病療養指導士認定機構だった。もしあの時私が東京糖尿病療養指導士だったら、彼は継続して来局してくれただろうか?
 東京CDEの資格を取得して6年が経過する。何が変わったかと聞かれると私が行っている服薬指導やサービスに変わりはないと思う。しかし、お薬手帳を見て糖尿病のお薬を服用されている方に「私は東京CDEです。何かご心配や不安があったら相談してくださいね」と一言添えるだけで患者さんの表情が柔らかくなることを感じる。
 薬学に基づいてドラマチックに活躍した症例なんて1000件に1例くらいだろう。薬剤師として何ができるのだろうか?何ができているのだろうか?と常に考えていた。患者さんは毎回検査数値を見せてくれる。そして私は記録をして情報、経過を共有する。患者さんが医師に今更聞けなかったことや内容が理解できないことを私に聞きたいというだけではない、何かしらの気持ちがある。そこには現状を知りたい、今後どうなるのかという不安、または褒めてもらいたい、薬剤師の私に知ってもらいたいという気持ち、安心感を得たい、また笑顔で叱咤激励をしてもらいたい、などがあるのだろう。
 だから私は「大丈夫、大丈夫。いっしょに頑張ろう!」と伝える。「大丈夫、大丈夫」は私の医師である父の口癖であり患者さんへの魔法の言葉だと、この年齢になって理解した。看護師になりたかった私が進んだ大学は薬学部だった。医師家系に生まれ育った私はやはり医療に携わりたかった。私の学生時代から病棟業務が出始め、病院に就職をした。現在、私は町の調剤薬局で一人薬剤師をしている。調剤薬局で雇われて働いていた時には沢山の葛藤があり、立ち位置がわからなかったが、開局をして12年、患者さんと長い年月をかかわることができる喜びと重みを感じ日々勤めている。
 薬剤師は専門職であるが、幅広い疾患への理解と薬全般の知識が求められる。それが強みにもなることが理解できて、やっと薬剤師としての自分を受け入れることができた。専門の知識を持っていることにはとても魅力がある。東京CDEとして日々進化している糖尿病の医療を学ぶ機会を得られることは、町の調剤薬局の一人薬剤師としてとても心強く感じる。
 私の人生を振り返りここまで来られたのは、恵まれた環境と沢山のよい出会いのおかげである事を強く感じて感謝をしている。それは家族であり友人であり先生であり患者さんであり、そこにはもちろん東京糖尿病療養指導士認定機構があります!また勉強させて下さい。よろしくお願い致します。

受賞者コメント

薬剤師としての自分を表現したかった。溢れる思いを言葉にして届けたいと文才もないのですが応募させて頂きました。私が最優秀賞を受賞した事にとても驚いています。
志しは開局当初より変わることなく、振り返ればあっという間に月日が過ぎ去り、そして人生の大半を薬剤師としての時間が占めてしまっていました。
ならば私はこれからも自分らしく今までかかわってきた患者さんやこれから出会う方々に安心して医療を提供できる薬剤師でありたいと更なる決意をいたしました。
この度は最優秀賞を頂き大変光栄に思います。ありがとうございました。

優秀賞 岩本 友美 様

ミニ防災展を開催して必要な備えが具体的に分かるよう工夫
今後もアンケート結果から得た学びを活かして療養指導を継続したい
ミニ防災展の様子

 近年、糖尿病外来で「地震が多くて怖いわね」という患者からの声が増え、災害時の療養指導の必要性を感じていた。そこで、関東大震災から100年の節目である今年が患者の関心が高まる時期だと考え、2023年9月、天沼診療所(以下、当院)の糖尿病外来にてミニ防災展を開催した。
 各展示物は主に糖尿病専門医、看護師、栄養士、薬剤師で相談しながら作成した。水・食料の備えについては、当院は高齢の患者が多いため、何をどのくらい準備すればいいか一目で分かるようパネルを展示し、患者一人一人へ説明した。医療物品は近隣薬局の協力を得て、内服薬やブドウ糖、インスリンサンプル、お薬手帳などの実物を並べ、必要な備えが具体的に分かるよう工夫した。患者によって治療内容が異なるため、事前に指導対象となる全患者の使用薬剤を確認し、インスリン治療中の患者には避難先でのインスリンの保存方法、針や消毒綿が手に入らない場合の対応を説明するなど、患者の個別性にも配慮した。
 ミニ防災展参加者(糖尿病患者のご家族も含む45名)には、事務職員に協力してもらい、アンケートも実施した。参加者全員が「参考になった」と回答し、自由記述欄では「物品を具体的に見せてもらえたので、イメージを捉えられた」「防災について日頃から考えていなかったので、気づきがあった」など多数の声をいただいた。一方で、インスリン治療中の患者は「医薬品不足」「血糖コントロールの乱れ」「停電」「低血糖」に対して不安であるとの回答数が内服治療のみの患者よりも多かった。これらの点以外にも患者アンケートからは多くの学びがあった。ミニ防災展開催の翌月には、アンケートで多かった質問に対してQ&A形式でお便りを発行し、参加者全員へ配布した。
 医師・看護師・薬剤師・栄養士・事務職員という多職種協同のもと、実りある療養指導を実施できた。今後もミニ防災展を通じて患者から得た学びを活かして、療養指導を継続したい。

受賞者コメント

この度は優秀賞という名誉ある賞をいただき、心から感謝申し上げます。
今回の療養指導を通じて患者様の不安に寄り添い、情報提供の場を設けることができた点はとても有意義でしたし、私自身も様々な学びにつながりました。
療養指導を支えてくださった職場の仲間にも感謝を伝えたいと思います。
今後も日々研鑽を積み重ね、より充実した糖尿病療養指導を実施していきたいです。

優秀賞 内田 優菜 様

指導する立場の私がこのままではいけない!
自分自身の生活を改善させた経験が患者さんのお話を聞く際に役立っていると感じます

 私は糖尿病内科クリニックに勤めて約5年の看護師です。日々患者さんに採血や療養指導を行っています。今まであまり自分の食生活や運動習慣について深く考えることなく、生活をしてきました。
 入職して3年ほど経った頃、身長156㎝、体重60kgという人生最大体重を更新、着ていた白衣が苦しくなってしまいました。患者さんから伺うダラダラ食べや飲酒習慣、忙しくて運動ができないなど”わかっているけどやめられない”エピソードに共感、生活を改められない日々を送っていました。
 しかし毎日の療養指導で食事療法や運動療法の知識を深めていくうちに、指導する立場の私がこのままではいけないと自然と生活を改めることとなりました。ズボラな私はジムへ行ったり過酷な食事制限をしたりはできません。そのため、日常生活の中で出来ることを実践しました。早寝早起き、1日1万歩、ベジファースト、バランスを考えた食事。無理せず気長に実践していくうちに約1年間で10kg減少、BMIは20になりました。検査室で患者さんに「痩せたね。何したの?」と興味を持ってもらえるほどに。患者さんへ療養指導を行っているつもりが自分自身の生活が改善し、その後も今まで2年間リバウンドせず過ごせています。入職当時よりも年齢を重ねましたが、正しく生活をコントロール出来ている今が、最も快活に過ごせていると思います。
 患者さんの中にも、以前の私のように食生活や運動習慣について特に考えることなく過ごしてきた方も多くいらっしゃると思います。人生最大体重を記録した経験が、患者さんのお話を聞く際に役立っていると感じます。今後も患者さんと共に自分の健康を保ち、末長く療養指導に携わっていきたいと思います。

受賞者コメント

この度は優秀賞をいただきありがとうございます。
日々患者さんに療養指導をする中で自分自身も成長させていただいていることを感じています。
糖尿病治療において継続は一番難しく、そしてとても大切なことだと思います。
私も継続していけるよう頑張ります。ありがとうございました。

優秀賞 鈴木 恵 様

残薬調査により患者の服薬アドヒアランスが改善した事例
認知機能低下の早期発見にもつながるため非常に有意義であることを実感

 昨年来、様々な薬剤が出荷調整となっています。また、残薬の金額が年間500億円以上ともいわれ医療費を圧迫しています。そこで、私達は薬を無駄にしてはいけないと強く考えるようになりました。
 私が看護師として勤務しているクリニックでは、普段から災害時の備えとして1~2週間分の薬を保管しておくことを推奨していますが、今回当院で行っている残薬調査が有意義であると実感できましたので報告します。
 調査の方法は、「薬が余っている」と訴えた患者さんに処方内容を明記した用紙を配布し、診察当日の残薬数を記入して持参して頂くという簡単なものです。すると、調査を行う中で私たちが想像する以上に残薬数が多かった患者さんがいました。その患者さんは3種類の薬剤で治療を行っていましたが、HbA1cが8.3%となかなか改善されていませんでした。本人は「薬はちゃんと飲めている。多少は余っているけど」と話されていました。ところが、実際に調査を行うとメトホルミンが112日分も残っていました。これに一番驚いていたのはご本人でしたが「こんなに残っているとは思わなかった。昼食後はちゃんと飲めていないかも」と自覚していただくことができました。そして医師と相談して服薬のタイミングを変更することでHbA1cが7.2%に改善しました。このことからも残薬調査は患者さんの服薬アドヒアランスの改善に有効であると思いました。
 また、残薬調査は認知機能低下の早期発見にもつながります。今まで管理できていた患者さんが突然「薬が全くない」「いっぱい余っているから今日はいらない」と訴えた際は、何らかのサインと捉え介入を開始し、必要時に薬局、家族、ケアマネージャー、訪問看護師と連携することもあります。
 未だ調査用紙も何度も改善を繰り返しており、まだまだ手探り状態ではありますが、今後も残薬調査をきっかけに患者さんを取り巻く環境を再認識し、患者さんに寄り添った療養指導につなげていきたいと考えています。

受賞者コメント

この度は東京CDE·CDS Excellent Awards2023優秀賞に選出して頂き、ありがとうございます。
私の周りには東京CDE·CDSのメンバーがいます。その仲間を中心に全スタッフが常に患者さんの小さな変化に気づき共有し対策を考える…そんな療養指導をコツコツ積み重ねています。
日々の努力が今回の受賞に導いてくれたと思います。
今回の受賞を励みに現状にとどまることなく、個々が更にステップアップし続けていきたいと思います。
ありがとうございました。

優秀賞 西 優香 様

「サラダを作るようにしました」野菜の摂取量が極端に少なかった患者さんが自ら野菜を取り入れてくれたことに感動しました

 私は循環器専門病院で管理栄養士をしています。2023年に東京CDEとなりました。外来で介入していた患者さんの事例を紹介します。
 初回に介入したのは2022年でした。仕事を退職される直前まで離島にて単身赴任生活しており、朝はフルーツグラノーラとバナナ、昼はカップ麺や菓子パン、15時には間食をし、夕食は自炊していたけど、離島生活では店が閉まるのが早くて野菜が買えなかったため、野菜摂取量は極端に少なかったです。飲酒習慣もありました。問題点は、1日を通して大豆製品や魚類などの頻度が少なく食品数が少ないこと、全体的に糖質に偏っていること、早食い、低い活動量などが挙げられました。患者さんは私がお伝えした問題点を細かくメモを取ってくれ、栄養指導を継続して少しずつ是正していきましょうとお約束しました。約2年間介入させていただきました。
 感動したことは「サラダを作るようにしました」と写真で撮ってきてくれたことです。日々の生活の中でお昼の菓子パンやインスタントラーメンは減少したものの、同居の奥さんが好きで一緒に食べているとのことでやめることはできませんでしたが「サラダを作る係は自分です!」と、自ら野菜を取り入れるようになってくれたことに感動しました。そのサラダには、たんぱく質も取り入れられ、食事内容はおのずとバランスの良いものとなり、果物も1単位の範囲内で食べてくれるようになりました。結果として、介入時にあった体重は86キロから83キロに。肝機能も正常値まで下がり、基準値以上だった血糖値や中性脂肪も正常値へ。血圧も安定、HbA1cは初回6.6%でしたが、6.3%まで下がりました。
 最後まで活動量を上げる行動変容はかないませんでしたが、患者さんと次はこんな話をしようかなと考えてしまうほど熱中し、次にお会いできる日が楽しみになっていました。人の為になるコメディカルでありたいと思える、そんな栄養指導の介入でした。

受賞者コメント

この度は、東京CDE・CDS Excellent Awards 2023の優秀賞に選出して頂き、ありがとうございます。
今回の受賞は驚いたと同時に励みになりましたし、自分の栄養指導を省みる良いきっかけになりました。
これからも東京CDE認定者として、患者様とのご縁を大切に、楽しく関わっていけたらと思います。