東京CDE・CDS Excellent Awards 2019受賞者への表彰を行いました!
東京CDE・CDS Excellent Awards 2019受賞者への表彰を行い、受賞者4名に賞状、トロフィー、賞金が授与されました。
受賞内容を掲載いたします。東京CDE・CDS Excellent Awards2019にご応募いただいた皆様、どうもありがとうございました!
最優秀賞 住垣 聰子 様
79歳で東京CDE資格を取得。好きな仕事で80歳現役が続けられそうです
2017年までは日本糖尿病療養指導士として、病院の専門外来で栄養指導の仕事を続けていました。勤務している病院に認定医がいないため更新手続きが出来ない状況となった際に東京糖尿病療養指導士の認定制度を知り、受験致しました。
私のようにフリ-ランスで仕事をしている管理栄養士にとって糖尿病療養指導士の資格は必須です。現在はクリニック、透析専門クリニック、在宅訪問栄養指導に関わっています。総合病院ではチ-ム医療もかないますが、個人のクリニックや在宅訪問では単独行動が主になります。そのような状況下で患者様に医学、栄養学の正しい知識をお伝えするためには常に自己研鑽が要求されます。私は勉強するのが大好きで糖尿病に関する学会や講習会には時間の許す限り参加して最新情報を習得するようにしています。
大学を卒業して済生会中央病院に入職し、日本で初めて食品交換表の作成、教育入院制度を故堀内光先生の指導で関わらせて頂きました。それから職場は変わりましたが50年余り管理栄養士として患者様に寄り添いながら、79歳で東京糖尿病療養指導士の資格を取り、現在でも「好きな仕事での80歳現役」が続けられそうです。
私のライフワ−クは糖尿病腎症の栄養指導です。昨年某市からの依頼で在宅糖尿病患者様の「糖尿病性腎症重症化予防事業」の仕事を受託しました。「糖尿病腎症重症化予防プログラム」に沿って生活習慣改善の計画に基づき面談3回、電話支援3回、食事や運動面の支援を6ヶ月行いました。その結果、肥満度、HbA1c、LDL-Cの改善、e-GFR、尿たんぱくは半数に改善又は現状維持がみられました。以上の結果より、早期に介入し、適切な食事指導、運動指導を行うことにより糖尿病腎症重症化予防が出来る事を確信しました。よって早期に糖尿病療養指導士が関わることが大事であり、今後も関わっていきたいと思っています。
栄養指導の仕事は感情を持った人間相手の仕事です。自分自身の豊かな人間性を磨くために音楽鑑賞、絵画鑑賞、茶道、ヨガなどに接し心の柔軟性を磨くよう心掛けています。指導する人がコチコチで理屈ばかり言われたら拒否したくなるでしょう。これからも患者様に寄り添った指導に努めたいと思っています。
優秀賞 板橋 友子 様
行動変容の支援の難しさを経験。その人らしい生活を考慮して治療と仕事の両立が出来るように根気よく支援する事が大切
生活習慣病である糖尿病では、患者が行動を変容する事が欠かせません。行動を変容させるための支援のためには、患者の病識と理解度を正しく評価する事が大切です。今回、糖尿病透析予防指導において、行動変容の支援の難しさを経験したのでここに報告します。
患者は36歳男性で介護士をしています。シフト制にも拘らず残業が多い為、生活が不規則でした。一人暮らしで食事はコンビニ食と外食が主でした。仕事が忙しく、診察日に来院しなかった事や薬を内服していない事も多く、HbA1cは12%と悪化していました。それでも仕事が忙しく、入院はしたくないとの希望があり、外来でインスリン導入となりました。インスリン導入の説明時に「自分は介護士で、インスリンを使用している利用者さんを沢山みているから大丈夫ですよ。ランタスですよね。知っていますよ。合併症の事も知っていますよ」という発言がありました。以前も糖尿病透析予防指導を受けていた事や介護士である事から、糖尿病の知識はある程度取得しているのではないかとその時は思っていました。
しかし、指導を繰り返しても生活は変わらずHbA1cは9~11%の状態が続きました。糖尿病治療は、食事・運動・薬物療法が不可欠でそれは患者の日常生活そのものですが、患者は仕事が忙しく治療を継続するのが難しい状況にありました。
患者が行動変容しなかったのは、糖尿病を正しく理解していなかったためと思われます。それは、糖尿病の初期は自覚症状に乏しい状態であることも一因でしょう。合併症の発症を予防する為には、その自覚症状が発症する前に血糖コントロールを行う事が大切です。患者が病態を正しく理解し、生活を見直して、行動の変容をしない限り正しい療養生活を送る事は出来ません。今回は「介護士なので大丈夫」という発言が患者評価に影響し、行動変容の支援を十分に行う事が出来ませんでした。
糖尿病透析予防指導に、患者の自己管理能力、知識、理解度を正しく評価し、その人らしい生活を考慮して、治療と仕事の両立が出来るように根気よく支援する事が大切であると改めて学びました。これからも糖尿病が悪化せず、透析が予防出来る様に、この事例を忘れずに今後の看護に役立ていきたいと思います。
優秀賞 加藤 則子 様
患者さんの納得した満足そうなお顔を見たときに自分の勉強が役立って良かったと思います
東京CDE・CDSとしての活動は地域の糖尿病に携わる方々と一緒に勉強し、糖尿病の発症予防・重症化予防に努力することが大切だと思います。
私が経験した70代後半の患者さんの事例を紹介します。予約時間を間違える、薬が足らないと来院をする、家に帰る道が分からなくなる、HbA1cの悪化など、問題事項が重なってきました。スタッフと相談し、調剤薬局の薬剤師さんに在宅訪問薬剤管理指導に入ってもらうことになりました。そこで残薬がたくさんあること、注射をあまり打っていないことが分かりました。自営業で家族は皆それぞれ忙しく、患者さんが自分で薬の管理ができなくなったことに気付いていませんでした。認知機能障害が急に進んだ患者さんの援助に、薬剤師さんの定期的な訪問が極めて有効だった一例です。
続いて高齢発症1型糖尿病の患者さん事例を紹介します。X年X月X日に劇症1型糖尿病発症と診断され、教育入院後に当院を初診しました。強化インスリン療法の継続と持続血糖測定はDexcomG4で管理することになりました。退院時HbA1cが高かったため、SGLT2阻害薬(SGLT2i)が新たに処方されていました。血糖値は30から400mg/dLまで乱高下し、常に低血糖の不安を抱えていました。当院ではSGLT2iを中止、カーボカウント他の指導を開始しました。まずは頻発する重症低血糖がなくなりました。患者さんは観察力が鋭く理解力もあるのですが、インスリン治療の情報過多による迷い・不安と、それを自分の場合に当てはめることができないようでした。また発症前と同じようにお菓子も食べたい気持ちが強いのです。食事写真を提案し、見ながら少しずつ改善しています。
当院では成人発症の1型糖尿病の患者さんが多く、インスリンポンプやSAPも外来で導入しています。FGM(フリースタイルリブレ)を使っている場合はその解析と食事中の糖質量の解析、血糖値・インスリン量・活動量・生活時間との調整をアドバイスします。SAPの方は『基礎インスリンが止まる機能が助かる、こんな良い機器をもっとみんなが使えば良いのに』ともおっしゃいます。自己負担は増えますが患者さんの満足度は高く、紹介して良かったと思います。これらを指導するには勉強が欠かせません。東京CDE資格を取った後も自己研鑽に絶えず努力しています。
初診患者さんの疑問に対応し、患者さんの納得した満足そうなお顔を見たときに、東京CDE受験などこれまでの自分の勉強が役立って本当に良かったと思います。
優秀賞 古溝 小百合 様
再教育により改善がみられたケース 実際の生活の場面で直接わかりやすく指導できることを強みに今後も患者様を支えていきたい
私は訪問看護ステーションで理学療法士として勤務している。入院中は糖尿病療養指導を十分に受け退院するものの、継続は難しく、中には徐々に自己流の不適切な療養生活に戻ってしまう患者様が少なくない為、再教育の必要性を日々感じている。以下に再教育により改善がみられたケースについて紹介する。
70歳代のAさんは2型糖尿病と、合併症である脳血管障害から右片麻痺を呈し、車椅子生活である。糖尿病を患い5年経過しているがHbA1cは7.2%前後と変わらず、その他の採血データはほぼ正常値で、新たな合併症はなかった。訪問リハビリを行い、体力がついたことで、ご家族との旅行の機会が増え、担当の私もリハビリの効果が出て本人の楽しみが増えたことを嬉しく思っていた。しかし、この旅行機会の増加をきっかけにHbA1c7.6、LDL-C、TGは基準値を超えて高くなっていった。
再教育が必要であると考え、食事療法については外食の指導と、普段の食事までも摂取カロリー過多や濃厚な味付けになっていないか、実際の食事メニューを見つつ再確認した。運動療法については転倒のリスクの少ない肢位でのレジスタンス運動を自主トレーニングでも行うよう指導。車椅子生活により自分でできる運動は限られてしまうためデイサービスとも連携を図った。
その後の採血データでは若干の改善はあったもののSGLT2阻害薬が追加された。しかし、Aさんは新たな内服薬追加に対する抵抗・不安感が強く、「低血糖や膀胱炎の副作用の説明を受けたから飲みたくない」と内服しない状態が続いていた。副作用のリスクを軽減するため、必要な一日の水分量を普段飲んでいるマグカップで計量しながら説明。また、主治医より一日おきの内服から開始してもいいとのことだったので、リハビリやデイサービスのない日が低血糖のリスクが低いと考え、その日から一日おきでの内服を開始し、副作用なく内服できるようになった。旅行を楽しみつつ最終的にはHbA1c6.8、その他は正常値まで改善が見られた。
入院・外来での療養指導ではその場では十分に納得しているつもりでも、実際に自宅で行おうとすると忘れてしまい、不安に思う患者様も少なくない。療養生活を維持していくことは大変で、Aさんのように逸脱してしまうこともあるが、実際の生活の場面で直接わかりやすく指導できることを強みに今後も患者様を支えていきたい。